■超有名な話題作。映画ポスターの、教壇に立ってにっこりしてる伊藤英明さん(スーツは血だらけ)もインパクトありました。
■~あらすじ~
生徒からも同僚からも信頼の厚い高校教師、蓮実聖司(愛称ハスミン)。
が、彼はサイコパスで大量殺人犯としての顔も持っていた。
その正体につながる証拠を知られた蓮実は隠滅のため、文化祭の準備で学校に泊まり込む担当クラスの生徒を皆殺しにすることを決意するが……。
以下ネタばれありです。
■これ、雑誌連載時にリアルタイムで追ってたらまた違う感覚だったろうなあ、と強く思います。
私は読む時点でハスミンがどんなかって情報がもう入ってきちゃってたので序盤も不気味だったんだけど、これ、普通に読んでたらハスミンいいヤツ!から入るので、……あれ?あれ?でも……あれ?あれれー?ってなってくと思う。
軽トラで学校に通う、人気の熱血青年先生……近所の犬に餌やりながらランニング……学校のトラブルも颯爽と解決……ってところから、え、犬の餌ハンバーグなの?タマネギたっぷり入れてるの?!……なかなか効果ないなーって……え、うるさいカラスは処刑するの?……あれこの人法のモラル低いのかな……ん?モンペの家になにしに……放火?……あれあれ?………………はあ?!!
って連載ごとに徐々になってくのはすごい感覚じゃないかなあと。連載初期からハスミンサイコパスとかって情報出しがなかったなら、読者も生徒たちと同じでハスミンに騙されるところから始まるんですよね。
知ってて読んでも怖いけど……。
まあ最初の夢の内容からしてこの人?感はあるけれども。ここまでとは思わなかった!んじゃないかな。
■蓮実聖司(ハスミセイジ)
知ってても衝撃を受けた主人公。この作家さんの作品でもかなりの……『青い炎』の主人公もすごく怖くて(思い詰め方が)印象強いんだけど、ハスミンは化け物のカテゴリだからなあ。
なついてくる女生徒の髪の毛ぐしゃぐしゃにかいぐりなでするところとか、スピード感のある授業の感じとか、人気のあるのがすごく伝わってくる。注意するところはするし、生徒のノリに乗ってあげたりもするし。こんな先生いたら、私もすごく好きになってる。
好みの女生徒を自クラスにゲットするのに問題児を引き受けるとか、あったらイヤだなあ。でもありそう。
後半の生徒殺しは緊迫してほんとにページをめくるたびに「ひいい!」な感じだけど、その前のハスミンの描写で私が特にゾッときたのは
・両親らが、あれ?この子ちょっと?と気づいて心理テストやカウンセリングなど受けさせようとした子供時代。
テストに向かわされて、彼はすぐに思います。
"彼らは、いったいなぜ、こんな、わけのわからないテストをしようとするのだろう。
彼らの本当の狙いは、何なのだろう。
もしかしたら、このテストには、正直に答えてはいけないのかもしれない。" (" "内引用)
正直に答えたら大人の求めてるものからずれるって自覚がある!!。その明晰さが怖い……。
この両親が疑惑を持った事件である、砂場にガラス片が埋まっていて、それを蓮実少年は知っていたのに取り除きもせず、別の子がそのあたりに手をつっこむのをわくわくして見ていた、っていうのも怖い……。
・蓮実を疑い調べていた生徒・早水圭介の、なぜ殺人をするのかという質問に対して、
『選択肢の幅が、ずっと広い』というのも、なるほどなあ……って思わず納得しちゃう説得力。
問題にぶつかった際の解決法が多い。ふつうは躊躇する殺人も、手段のひとつとして数えられるのが蓮実なんですね。あいつさえいなければうまくいくのに、を実行できちゃう。圭介には理解不能すぎるモンスターでした。
ただ、
両親すらためらいなく殺した彼が、殺害時に手が動かなくなった2名の女性。
この例外はなんだろう。気になります。
ひとりは彼に感情について教えたクラスメイトで、ひとりはペット扱いで寵愛していた女生徒で。そのクラスメイトが自殺したとき、敵討ちをした蓮実には人間性が見えたような気もするんだけど…。
・生徒たちの虐殺のあと、被害者を装った蓮実を事情聴取する警察に対して。
散弾銃を使っていたため一時的な難聴になっていた蓮実が、刑事の顔を瞬きもせずにじっと見ていて、唇を読んでいる…と刑事をぞくりとさせるシーン。これ気づいた刑事さんもかっこいいー!!。
■最後は、ほんのささいな、ひとりの男子生徒が、自分も危機的状況であっても友達を救おうとAEDを使った、その録音記録から蓮実の犯行が露見するという結末で、ここは感動。
AEDは作動すると自動で録音も開始されるって初めて知ったよ!。なんのためになんだろう?。
前半の避難訓練シーンがのちのちのすごい伏線になってるのね。なんで避難訓練こんなに描写するのかな?て思ったけど、さすまたとか脱出袋とかAEDとか、学校の防災グッズ大活躍でした。
犯行のバレた蓮実は次のステージへ。
心神喪失者の演技を開始。切り替え早い……。
ハスミンつかまったーめでたし!と終わらず、
生き残った生徒が、
"そして、蓮実が自由の身になるようなことが現実に起きたら、まちがいなく、自分たち二人を殺しに来るに違いない"
と確信し唇を震わせる……というエンドなんですよね。ホラーだ……。ハスミンから逃げるにはアメリカ逃亡しかない……!。
アメリカ追放処分になってるというのもすごいわハスミン。
トータルで殺害した人数は70名を超え……てるんだよね。
■彼のお気に入りで、機嫌がいいと口ずさむ曲、モリタートの『三文オペラ』ネットで検索してみたけどなんかのどかなメロディなのね。
銃撃ちながらこんなの口笛吹いてるとか怖いーーー!!。
■『引き返し不能点(ポイント・オブ・ノーリターン)』。
そこを過ぎた後は、もう読みとめられない怒涛の展開…。
■片桐冷花(カタギリレイカ)
生徒側の主役かな。直感でハスミンのいつわりの仮面を感じ、怖いと思っている。そこに才気あるわ行動力もあるわな友人以上恋人未満な早水圭介、夏越雄一郎とともに、蓮実の秘密に迫っていきます。
修学旅行で暗い道中、圭介の背中につかまったシーンとか、後のこと考えると泣ける……。お互い片思いというか、好きあってたのに三人の関係に一歩踏み出せなかったのが、担任がサイコなばかりにあんなことに……。
映画見てないので、読んでたときのイメージは橋本愛ちゃんとかそんな感じかな。
クラスではそんなに目立たないんだけど、隠れ美少女でファンもいる。
■安原美彌(ヤスハラミヤ)
いじめっ子ポジなのに憎めない子だったなー。
屋上から落とされたのに生きていて本当に良かった。
事件が終わって、なにを考えているんだろう。この子の内面が知りたい。
ハスミンはモラルが非常に低いので(サイコパスの特徴)女生徒も同僚も関係をためらう理由にはならないんですね。
いまもハスミンを好きなんだろうか…。
■早水圭介(ハヤミケイスケ)
思わぬ早い退場に唖然…………。探偵役は無事な法則じゃなかったのかー!!。
冷花を守りたかったろうなあ。味方の選択を誤った……。
蓮実と
"目と目が合ったとき、圭介は、心の中で絶叫した"
ってシーンがすごくこわかった。目ってやっぱりいろんなものが伝わってくる器官だと思うので、ここで彼の見たものって…って想像するともう。
拉致され、あっけらかんと拷問をちらつかせられるシーンはゾッとします。ハスミンは共感する能力が低い(ほぼない?)ので、人が痛いと自分もつらいとかいう気持ちにならないので、拷問について床が汚れたら掃除するの俺だしめんどくさ!としか思わないんです。
■教師達
不気味だったり、いい人だったり……。園田先生は先生の鑑。泣ける。
先生達も個性豊かでした。
猫山先生はなにか活躍があるのかと思っていたのに……無駄に美形設定なのは本当に無駄だった。
■先生の手で殺すことを卒業、と表現しているのがもう。
カラスや銃の幻覚がなんか好きでした。大量殺人によるハイが出現させた幻だけど、それがカラスだったのはなぜなんだろう。
どうしてハスミンはあんなに二匹のカラス「フギン(思考)とムニン(記憶)」にこだわってたのかな。
■非常時での行動、その友情や愛情、勇気と覚悟など、やっぱり感動します。
平和に暮らしてたのに、急に戦時下におかれてしまった子供たち。私だったら屋上前でうろうろハスミン待つしかできなそうだ…。←一番絶望的なグループ…。
腹立つけど、蓮実に取引を持ちかけた渡会健吾もできる子だよね。圭介も健吾も、判断は的確で間違ってない。ただ蓮実のが上手だった、っていう。
■原作をクリアできたので、次は映画にいこうと思います~。
2014年04月11日
小説感想 『ダイナー』 平山夢明先生
■超面白かった!!。
実話聞き取り系・怪談の短編が多い作者さんが、エンターテイメントを意識して作ったという長編小説で、彼のテイストとエンタメがすごくマッチしてる気がします。
いままでの平山夢明さんのフィクション系でダントツ一番好き!!。これ映像化したらいいのに!。
■映像化するなら・・・と考えると、
わたし(オオバカナコ)=深津絵里・西田尚美
ボンベロ=渡辺謙
スキン=渡部篤郎
キッド=神木竜之介
炎眉(えんび)=柴咲コウ・中谷美紀・杏
九十九九(つくもきゅー)=斉藤工・チームNACSのシリアス顔の人(名前失念)
とかとかとか!。
なんかヒットしそうじゃない?。
登場人物名が中2っぽいのは仕様です。じゃなく、おそらくみんなカナコ以外偽名やコードネームなんですね。料理人も客も『殺し屋』の店に放り込まれた、哀れな、でもたくましい女性の物語です。
■あらすじ
軽い気持ちで闇サイトの仕事を引き受けたカナコは、失敗し依頼者とともにつかまり、拷問の末殺されかかる。
山中に埋められる寸前、自分を生かすメリットとして叫んだ「料理ができます!」に興味を引かれた男がカナコを購入。ちょうどウェイトレスの足りないダイナー『キャンティーン』へ連れていくことに。
助かったかと思ったのもつかの間、料理人のボンベロを始めとして、そこはみんなが異常な殺人者。殺し屋たちのダイナーだった・・・。
■わたし(オオバカナコ)
彼女の目線でお話は進みます。
まわりが変な人たち、一般人のわたし、どうしよー的なメイちゃんやら花ざかりやら花男的な設定に一見見えつつ、非常にハードです。乙女ゲームになり得ません。誰も助けてくれず、誰も大事に思ってくれず、誰もがいかれている・・・・序盤から中盤まではかわいそうすぎて読んでいてつらい・・・。
彼女から得た教訓=闇サイトで依頼される仕事は危険。
軽い気持ちでやっちゃいけません。
海外旅行に行く軍資金稼ぎで犯罪の運転手を引き受けてしまったのが地獄の始まりでした。
ボンベロとのゆっくりとした親交の深まり、優しげにいたわってくれるスキンとのつかの間の幸せと救いが、読んでいてこちらもほっこり。
少しずつ、自分の命や人生を考え、変わっていくカナコはかっこよかった。
極限状態でも人間性を失わない強さが彼女にはある。
あと、機転がきくのが綱渡りの中で生き残った秘訣だよねー。はさみを見かけたらポケットへ。これ大事。彼女のポケットはけっこういろんなものが詰め込まれていたような。毒のカプセル・ナイフ・みみたぶの切れ端とピアスとかも入れてた。
ボンベロに殺される覚悟を決めたシーン、彼との最期の別れにお礼を言ったシーン、脱出前の会話、そしてエンディング・・・・・泣ける・・・。
この状況下でありながらツッコミ体質なあたりはちょっと笑えます。
個人的には、料理というクリエイティブで工夫のいることが得意なカナコが、生きていることをどうでもいいというのは少し解せない気も。どうでもいー死にたいーって思って料理する心理ってわかんない。灰色の日常の中で料理だけが趣味といえるものだったのかな。
■ボンベロ
寡黙な料理人で、元殺し屋。
替えのきくウェイトレスのカナコとの交流の中で、少しずつ表情や人間味を見せてくるあたりから印象がかわってきます。
彼から得た知識は、グリルとグリドルの違い。へーそうなんだ(火のあたる向きが上下逆)。
ダークヒーローですね・・・。
大きな秘密を抱えている、多くを語らない、でもすこし愛嬌のある、愛すべきヒーローです。かっこよすぎだボンベロ・・・!!。『レオン』のジャン・レノとかイメージかな。
カナコがボンベロのバーガーをおいしい!て叫んだときの「当たり前すぎて誉め言葉にもならんな」とか言いつつちょい喜びとか、殺し屋のツンデレにどうしたらいいやら!。
さりげなくカナコを手助けするシーンにときめきます。助けないところもときめいたりします。いや、ほんとにやばい時は助けてくれるよね・・・?。腕を鰹節にされそうになったときは助けてくれなかったですが(痛そう)。
最後はたった一本の血清も、自分の腕をさしおいて彼女に使ってしまった。そして、組織と戦う道を選んでカナコを助けてくれた。
生きてますように!。
いつかカナコのところに戻ってきて、一緒に店をやればいいよ・・・。
■スキン
非情で理不尽な、いつ殺されるかわからない世界で、はじめて優しくしてくれたひと。
好きになってまうやろー!!です。
紳士的で穏やかな裏のその破滅的な二面性を知ってもなお、スキンよかったよ・・・。爆弾だらけのコートは危ないかと思います。メタルギアのスネークみたいなひとだな。
スフレ大好きっ子。その喜びの描写にこちらもスフレ食べたくなるv。
カナコをもし何事もなく買って連れ出していたら、どうなったんだろう。キッドはスキンは彼女を殺すと本気で思っていたみたいだけど、意外とスフレの仕様さえ間違わなければ穏やかに幸せにやっていけるかも。
スイッチの切り替わる表現とかが怖い。さっきまで穏やかに会話をしていたのに、目の前にいるカナコがわからなくなるとか。
この人のお母さんの影響がかなりありそうだけど、過干渉よくない。
■炎眉(えんび)
でてくるキャラクタみんな名前すごいけど、彼女と無礼図(ブレイズ)がトップですね!。無礼図ってヤンキーセンスだわv。
殺し屋というより暗殺者、とはボンベロ評で、着飾った美しい女だけれどピアスすら武器。
ボンベロ熱烈ラブ。
過去については明かされなかったけど、なんだかかわいそうな子でした・・・。友達にはなれないけどね!ボンベロと口きいただけでターゲットだし。
離れるくらいなら殺して、ていう約束をしたがらないのは、ボンベロが炎眉を殺したくないからってどうして気づかないんだろう。恋愛感情はないみたいだけど(けっこう年の差あり?)彼女のこと、大事に思ってたみたいだったのにな。
ボンベロの性格を承知しているから、命がけで手に入れた血清を彼が自分でなくカナコに使ってしまう未来もわかっていたんじゃないかと思います。泣ける・・・。死ぬことがわかってから、したのがボンベロに悟られないよう平気を装いコーヒーの注文って潔すぎる。
ファキールの死も同じで、もうとっくに覚悟は完了しているのをうかがわせます。そんな心境に至れるのがすごい・・・。
■キッド
自分がしたことを、されたことにして言うって、やな子だなもう!。
子供のナリしてモンスターっていうのはほんと怖いテーマです。
高橋留美子先生の『人魚の傷』ていう作品を思い出しました。これも怖かった・・・。
ホームレスの男性を拾って優しい祖父のように見立て、場合によっては使い捨てにするキッドとかぶるなあ。
虐待を受けていた過去の話はきつい。ベルトのバックルは人を殴るためのものじゃないよー!。
ちゃんとした大人を見たことがない子が大人になるのを拒んで、子供の容姿に拘泥している感じにも見えて、キッド切ない・・・。でも三十路過ぎ。
ボンベロの声色を使ってカナコを騙してダイナーにやってくるシーンは怖かった。
ボンベロが帰ってくるまでの必死の時間稼ぎはじりじりする・・・!。
私このダイナーにいたら一日持たない・・。
■九十九九(つくもきゅー)
公務員のかたがここまでしてるなら、いくらでも税金払うよ・・・。
九かっこよかった・・・・!!。ただのチンピラかと思いきやすごい重要キャラだった。ただ、メンマ色の顔色ってなによ、白なの赤なの、と読みながら不思議だったんだけど、ナルトと間違えていた自分にショック。メンマってシナチクのことか?!。土気色って言いたかったのねカナコ・・・!。アル中だから?。
ものすごい蛇足ですが、わたしはシナチクを「割り箸を煮たもの」と父に騙されて育ってきていたので、いまだに食べ物の気がしない。食べるけど。
九の言動に、潜入捜査員の過酷さを見ました・・・・。おそろし!。
『インファナル・アフェア』の日本リメイク版やるんだよね!!西島英俊さんと香川さんで!!。これ韓国映画でいまのとこ一番好きです。←香港映画でした。すみません。
戦闘シーンとかすごいかっこよかったけど、映像で考えると九はカナコとおそろいのウエイトレスの格好なのよね・・・。ボンベロの着替えは置いてなかったのか・・・。
これ以上ないほどの非常事態でも、彼が直腸から出した武器を嫌がるボンベロとカナコがかわいかった。まあ・・・うん。
■菊千代
改造ブルドッグ。容貌がどうしても『リトル・チャロ』のナイスなボクサー犬で再現されてしまう。
怖いけど忠義に厚いいい奴。
主人同様この子もツンデレ。
ボンベロとともに生きてて欲しいと願うばかり・・・・!。カナコと彼のタッグで強敵に向かっていったシーンよかった!。
■オヅ
せつないなー。
過去に捨てた娘を探し出したら、重度のジャンキーに身を落としているという。
最後にボンベロの料理を一緒に食べて、それから苦しまないように殺した父親。
背景はわかんないけど、この娘も根はいい子っぽくて。
クスリだめ!絶対!!
ジャンキーに途中下車はない、っていうボンベロの言葉が重いです。どちらに進むにしろ破滅しかないということなんですね。
オヅのこと、その後ボンベロが手引きしたみたいだし、生き残っているといいな・・・組織も間をおかずほぼ壊滅だから、オヅどころじゃないよね。望んだ老後を迎えていてほしい。
■ミコト
嫌な女だなもう!。ソーハとミコトは悪いとこしかないですね!。蛇毒の使い手。毒の管をのどの下に入れてる感じなのかな。
苦しそう。
■殺し屋たちがくつろげるダイナー・・・いやいや、くつろげませんけど?!って連日の騒ぎだったな・・・。穏やかな日とかあるのかしら。
予約制にして、やばいのとやばいのが会わないようにするだけで違うかも。
ドアはボンベロの承認がないと入れない特殊製。爆破物用の処理箱まである。
でもお風呂(湯船)はない。カナコかわいそう。この話の感じだと、カナコは基本すっぴんだよね。眉毛なかったらきつかろう。
■ちょいちょい出てくる殺し雑学がためになるやら怖いやら!。海に沈めるときは網間の広めの金網に入れるのが良い。これ幼稚園レベルの知識らしい。(潮の影響を受けにくい、魚が通って食べてくれるからだそうな)
■『東京伝説』シリーズと違って、きれいに物語として終わるので、悲しさや残酷さはあるけど、読後感がいいです。おもしろいです!。
実話聞き取り系・怪談の短編が多い作者さんが、エンターテイメントを意識して作ったという長編小説で、彼のテイストとエンタメがすごくマッチしてる気がします。
いままでの平山夢明さんのフィクション系でダントツ一番好き!!。これ映像化したらいいのに!。
■映像化するなら・・・と考えると、
わたし(オオバカナコ)=深津絵里・西田尚美
ボンベロ=渡辺謙
スキン=渡部篤郎
キッド=神木竜之介
炎眉(えんび)=柴咲コウ・中谷美紀・杏
九十九九(つくもきゅー)=斉藤工・チームNACSのシリアス顔の人(名前失念)
とかとかとか!。
なんかヒットしそうじゃない?。
登場人物名が中2っぽいのは仕様です。じゃなく、おそらくみんなカナコ以外偽名やコードネームなんですね。料理人も客も『殺し屋』の店に放り込まれた、哀れな、でもたくましい女性の物語です。
■あらすじ
軽い気持ちで闇サイトの仕事を引き受けたカナコは、失敗し依頼者とともにつかまり、拷問の末殺されかかる。
山中に埋められる寸前、自分を生かすメリットとして叫んだ「料理ができます!」に興味を引かれた男がカナコを購入。ちょうどウェイトレスの足りないダイナー『キャンティーン』へ連れていくことに。
助かったかと思ったのもつかの間、料理人のボンベロを始めとして、そこはみんなが異常な殺人者。殺し屋たちのダイナーだった・・・。
■わたし(オオバカナコ)
彼女の目線でお話は進みます。
まわりが変な人たち、一般人のわたし、どうしよー的なメイちゃんやら花ざかりやら花男的な設定に一見見えつつ、非常にハードです。乙女ゲームになり得ません。誰も助けてくれず、誰も大事に思ってくれず、誰もがいかれている・・・・序盤から中盤まではかわいそうすぎて読んでいてつらい・・・。
彼女から得た教訓=闇サイトで依頼される仕事は危険。
軽い気持ちでやっちゃいけません。
海外旅行に行く軍資金稼ぎで犯罪の運転手を引き受けてしまったのが地獄の始まりでした。
ボンベロとのゆっくりとした親交の深まり、優しげにいたわってくれるスキンとのつかの間の幸せと救いが、読んでいてこちらもほっこり。
少しずつ、自分の命や人生を考え、変わっていくカナコはかっこよかった。
極限状態でも人間性を失わない強さが彼女にはある。
あと、機転がきくのが綱渡りの中で生き残った秘訣だよねー。はさみを見かけたらポケットへ。これ大事。彼女のポケットはけっこういろんなものが詰め込まれていたような。毒のカプセル・ナイフ・みみたぶの切れ端とピアスとかも入れてた。
ボンベロに殺される覚悟を決めたシーン、彼との最期の別れにお礼を言ったシーン、脱出前の会話、そしてエンディング・・・・・泣ける・・・。
この状況下でありながらツッコミ体質なあたりはちょっと笑えます。
個人的には、料理というクリエイティブで工夫のいることが得意なカナコが、生きていることをどうでもいいというのは少し解せない気も。どうでもいー死にたいーって思って料理する心理ってわかんない。灰色の日常の中で料理だけが趣味といえるものだったのかな。
■ボンベロ
寡黙な料理人で、元殺し屋。
替えのきくウェイトレスのカナコとの交流の中で、少しずつ表情や人間味を見せてくるあたりから印象がかわってきます。
彼から得た知識は、グリルとグリドルの違い。へーそうなんだ(火のあたる向きが上下逆)。
ダークヒーローですね・・・。
大きな秘密を抱えている、多くを語らない、でもすこし愛嬌のある、愛すべきヒーローです。かっこよすぎだボンベロ・・・!!。『レオン』のジャン・レノとかイメージかな。
カナコがボンベロのバーガーをおいしい!て叫んだときの「当たり前すぎて誉め言葉にもならんな」とか言いつつちょい喜びとか、殺し屋のツンデレにどうしたらいいやら!。
さりげなくカナコを手助けするシーンにときめきます。助けないところもときめいたりします。いや、ほんとにやばい時は助けてくれるよね・・・?。腕を鰹節にされそうになったときは助けてくれなかったですが(痛そう)。
最後はたった一本の血清も、自分の腕をさしおいて彼女に使ってしまった。そして、組織と戦う道を選んでカナコを助けてくれた。
生きてますように!。
いつかカナコのところに戻ってきて、一緒に店をやればいいよ・・・。
■スキン
非情で理不尽な、いつ殺されるかわからない世界で、はじめて優しくしてくれたひと。
好きになってまうやろー!!です。
紳士的で穏やかな裏のその破滅的な二面性を知ってもなお、スキンよかったよ・・・。爆弾だらけのコートは危ないかと思います。メタルギアのスネークみたいなひとだな。
スフレ大好きっ子。その喜びの描写にこちらもスフレ食べたくなるv。
カナコをもし何事もなく買って連れ出していたら、どうなったんだろう。キッドはスキンは彼女を殺すと本気で思っていたみたいだけど、意外とスフレの仕様さえ間違わなければ穏やかに幸せにやっていけるかも。
スイッチの切り替わる表現とかが怖い。さっきまで穏やかに会話をしていたのに、目の前にいるカナコがわからなくなるとか。
この人のお母さんの影響がかなりありそうだけど、過干渉よくない。
■炎眉(えんび)
でてくるキャラクタみんな名前すごいけど、彼女と無礼図(ブレイズ)がトップですね!。無礼図ってヤンキーセンスだわv。
殺し屋というより暗殺者、とはボンベロ評で、着飾った美しい女だけれどピアスすら武器。
ボンベロ熱烈ラブ。
過去については明かされなかったけど、なんだかかわいそうな子でした・・・。友達にはなれないけどね!ボンベロと口きいただけでターゲットだし。
離れるくらいなら殺して、ていう約束をしたがらないのは、ボンベロが炎眉を殺したくないからってどうして気づかないんだろう。恋愛感情はないみたいだけど(けっこう年の差あり?)彼女のこと、大事に思ってたみたいだったのにな。
ボンベロの性格を承知しているから、命がけで手に入れた血清を彼が自分でなくカナコに使ってしまう未来もわかっていたんじゃないかと思います。泣ける・・・。死ぬことがわかってから、したのがボンベロに悟られないよう平気を装いコーヒーの注文って潔すぎる。
ファキールの死も同じで、もうとっくに覚悟は完了しているのをうかがわせます。そんな心境に至れるのがすごい・・・。
■キッド
自分がしたことを、されたことにして言うって、やな子だなもう!。
子供のナリしてモンスターっていうのはほんと怖いテーマです。
高橋留美子先生の『人魚の傷』ていう作品を思い出しました。これも怖かった・・・。
ホームレスの男性を拾って優しい祖父のように見立て、場合によっては使い捨てにするキッドとかぶるなあ。
虐待を受けていた過去の話はきつい。ベルトのバックルは人を殴るためのものじゃないよー!。
ちゃんとした大人を見たことがない子が大人になるのを拒んで、子供の容姿に拘泥している感じにも見えて、キッド切ない・・・。でも三十路過ぎ。
ボンベロの声色を使ってカナコを騙してダイナーにやってくるシーンは怖かった。
ボンベロが帰ってくるまでの必死の時間稼ぎはじりじりする・・・!。
私このダイナーにいたら一日持たない・・。
■九十九九(つくもきゅー)
公務員のかたがここまでしてるなら、いくらでも税金払うよ・・・。
九かっこよかった・・・・!!。ただのチンピラかと思いきやすごい重要キャラだった。ただ、メンマ色の顔色ってなによ、白なの赤なの、と読みながら不思議だったんだけど、ナルトと間違えていた自分にショック。メンマってシナチクのことか?!。土気色って言いたかったのねカナコ・・・!。アル中だから?。
ものすごい蛇足ですが、わたしはシナチクを「割り箸を煮たもの」と父に騙されて育ってきていたので、いまだに食べ物の気がしない。食べるけど。
九の言動に、潜入捜査員の過酷さを見ました・・・・。おそろし!。
『インファナル・アフェア』の日本リメイク版やるんだよね!!西島英俊さんと香川さんで!!。これ韓国映画でいまのとこ一番好きです。←香港映画でした。すみません。
戦闘シーンとかすごいかっこよかったけど、映像で考えると九はカナコとおそろいのウエイトレスの格好なのよね・・・。ボンベロの着替えは置いてなかったのか・・・。
これ以上ないほどの非常事態でも、彼が直腸から出した武器を嫌がるボンベロとカナコがかわいかった。まあ・・・うん。
■菊千代
改造ブルドッグ。容貌がどうしても『リトル・チャロ』のナイスなボクサー犬で再現されてしまう。
怖いけど忠義に厚いいい奴。
主人同様この子もツンデレ。
ボンベロとともに生きてて欲しいと願うばかり・・・・!。カナコと彼のタッグで強敵に向かっていったシーンよかった!。
■オヅ
せつないなー。
過去に捨てた娘を探し出したら、重度のジャンキーに身を落としているという。
最後にボンベロの料理を一緒に食べて、それから苦しまないように殺した父親。
背景はわかんないけど、この娘も根はいい子っぽくて。
クスリだめ!絶対!!
ジャンキーに途中下車はない、っていうボンベロの言葉が重いです。どちらに進むにしろ破滅しかないということなんですね。
オヅのこと、その後ボンベロが手引きしたみたいだし、生き残っているといいな・・・組織も間をおかずほぼ壊滅だから、オヅどころじゃないよね。望んだ老後を迎えていてほしい。
■ミコト
嫌な女だなもう!。ソーハとミコトは悪いとこしかないですね!。蛇毒の使い手。毒の管をのどの下に入れてる感じなのかな。
苦しそう。
■殺し屋たちがくつろげるダイナー・・・いやいや、くつろげませんけど?!って連日の騒ぎだったな・・・。穏やかな日とかあるのかしら。
予約制にして、やばいのとやばいのが会わないようにするだけで違うかも。
ドアはボンベロの承認がないと入れない特殊製。爆破物用の処理箱まである。
でもお風呂(湯船)はない。カナコかわいそう。この話の感じだと、カナコは基本すっぴんだよね。眉毛なかったらきつかろう。
■ちょいちょい出てくる殺し雑学がためになるやら怖いやら!。海に沈めるときは網間の広めの金網に入れるのが良い。これ幼稚園レベルの知識らしい。(潮の影響を受けにくい、魚が通って食べてくれるからだそうな)
■『東京伝説』シリーズと違って、きれいに物語として終わるので、悲しさや残酷さはあるけど、読後感がいいです。おもしろいです!。
小説感想 『迷路館の殺人』 綾辻行人先生
本棚の整頓をしていたら出てきたので再読。なつかしいーーv。
驚いたのは、すべてのトリックを覚えていたこと。
意外に記憶力いいな私・・・・m(_ _)m。
何年前かもわからないくらい前に読んだのですが。
もう少し新鮮に読めると思っていたので自分にちょっとショック・・。
綾辻さんの作品は、『十角館の殺人』がやっぱり一番好きなんですが (これホントおもしろいよね・・・)、迷路も楽しかったです。
さすがにこんな家建てるなよ中村青司・・・と思います。
部屋から部屋に行くのに迷路!。お風呂行くのも迷路!。不便だわー。
迷ったときのため?トイレだらけだから掃除大変だし・・・。
住みたくないーー!。
まあ、青司さん作品で住みたい館はないけど!。
以下ネタばれあり(『十角館』ネタばれも含む)
島田探偵大活躍。
今はなつかしいワープロ・フロッピーが出てきますが、私もカナ打ちなのであのトリックがわかったのは嬉しかったv。
(パッと見は意味不明なんだけど、カナの状態に直すと言葉になる。作中は親指シフトシステムだけど)
カナ入力のがやりやすいと思うんだけどなぁ・・・。私も、なにかに巻き込まれたら変なダイイングメッセージになるな・・・。
わたし=0qd、だもんね・・・意味わかんないよね・・・。
エイプリルフールが大事なポイントになってる話なのですが、最後に島田探偵がついたしょーもない「嘘」にひっかけてあるのがかわいいです。
遺産のために5人(恨みのない人4人)殺せるのか?・・・と思ってしまうので、犯人は壮絶・・・数十億円とはいえ・・・。
「男」、と思うと男にしか見えないけど、「女」、と知ってると女にしか見えないんだよね・・・・
後書きで、エラリィの扱いがひどい、かわいそうだと言われたそうですが、エラリィ大好きなんだと書かれてました。
そうか・・・好きなんですか・・・。
そうか・・・・。好きな人をあんな目に?。推理作家怖ェ。
驚いたのは、すべてのトリックを覚えていたこと。
意外に記憶力いいな私・・・・m(_ _)m。
何年前かもわからないくらい前に読んだのですが。
もう少し新鮮に読めると思っていたので自分にちょっとショック・・。
綾辻さんの作品は、『十角館の殺人』がやっぱり一番好きなんですが (これホントおもしろいよね・・・)、迷路も楽しかったです。
さすがにこんな家建てるなよ中村青司・・・と思います。
部屋から部屋に行くのに迷路!。お風呂行くのも迷路!。不便だわー。
迷ったときのため?トイレだらけだから掃除大変だし・・・。
住みたくないーー!。
まあ、青司さん作品で住みたい館はないけど!。
以下ネタばれあり(『十角館』ネタばれも含む)
島田探偵大活躍。
今はなつかしいワープロ・フロッピーが出てきますが、私もカナ打ちなのであのトリックがわかったのは嬉しかったv。
(パッと見は意味不明なんだけど、カナの状態に直すと言葉になる。作中は親指シフトシステムだけど)
カナ入力のがやりやすいと思うんだけどなぁ・・・。私も、なにかに巻き込まれたら変なダイイングメッセージになるな・・・。
わたし=0qd、だもんね・・・意味わかんないよね・・・。
エイプリルフールが大事なポイントになってる話なのですが、最後に島田探偵がついたしょーもない「嘘」にひっかけてあるのがかわいいです。
遺産のために5人(恨みのない人4人)殺せるのか?・・・と思ってしまうので、犯人は壮絶・・・数十億円とはいえ・・・。
「男」、と思うと男にしか見えないけど、「女」、と知ってると女にしか見えないんだよね・・・・
後書きで、エラリィの扱いがひどい、かわいそうだと言われたそうですが、エラリィ大好きなんだと書かれてました。
そうか・・・好きなんですか・・・。
そうか・・・・。好きな人をあんな目に?。推理作家怖ェ。