『ロスト・シンボル』
ダン・ブラウン先生
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■フリーメイソン!
この、単語だけでワクワクさせる組織のすごさ。
私女なんで絶対入れないんだけど。女性のための別組織もあるとは知らなんだ。
作中いろいろと世間の誤解があって大変なのだと説明あり。興味本位にしててすみません……。友愛団体ですからね!。
なんかモチーフが妖しいからさ……ピラミッドとか目とか儀式とか……。
■上下巻700ページ位あるのに、10時間ちょいの出来事なのか……すごい半日過ごしてるなあ、教授。
■あらすじ
ワシントンDCで教授がフリーメイソンの暗号解くのに奮闘する話。
ワシントンかけずり回るので、映画化が楽しみだ!!教授はそれどころじゃないけど毎回名所めぐってるよね。
とか期待してたのに……難航して次の話先に映画にするってなに?!!そこまでの難航てなに?!!。フリーメイソンだから?!(偏見)。
■ロバート・ラングドン
教授のうっかり、今回も炸裂!。頭いいのに弱点けっこうあるのが教授のかわいいところだよ……萌えキャラですよね教授。
友人ピーターとは一度も直接コンタクトしてないのに、代理人の言うこと信じてウキウキワシントンにお出かけしてきたら事件に巻き込まれるっていう。
疑って!教授!。
シリーズが続くと教授がコナン君みたいになってきちゃう……この巻き込まれ遭遇率。
今回、『天使と悪魔』を超えるピンチに陥ってます……いや……あれ、死ぬよね?。一度死んだんだよね?。
読んでて「教授ーー!これ絶対死んだ……」からの、「いいえ、テクノロジーです!」な生還にびっくり……そんなテクノロジー知らないから!(酸素を含んだ特殊な水なので、水責めされましたが水死しませんでした)。
恐怖の描写だった……。
棺に閉じこめられ、中から水があふれ身体を覆っていく……この手法は、拷問されているひとは「ほんとに死ぬ」と思うからとても有効なんだそうな。肺が水にひたされても呼吸できる、ていうとエヴァとかそうだね。あ、エヴァテクノロジーなのか……。
本来は拷問用途でなく、……なんだ?。臨死体験できるとか瞑想とかそんなのに使うものなんですかね。
敵は躊躇ない殺人鬼だけど、ラングドンだけはこの方法を用いたのは、一度目の死で解読できなくても、解読するまで死を繰り返すつもりだったのかな。
あいかわらず、閉所暗所で弱音吐くのがかわいい。
ヒロインに「どうしてロバートを置いていくんだ?」と彼女の心の声のようにぐちるのが微笑ましいし、それをばっさり「臆病な男だからよ」切るキャサリンがいかす。
■キャサリン
うーん、映画にするとキャストは誰だろう。才女なアラフィフ。美人。
ヒロインですね。容赦のないひどい目にあってるけど、機転に惚れる……!。
彼女の秘密の実験室にたどりつくには真の暗闇のだだっ広い空間を歩いて行かないとならない。
彼女も絶対変人。照明いれろ。
広すぎて、あったとしても懐中電灯の光が飲み込まれるくらいの空間なんだろうな。毎日が肝試しです。
ここで殺人鬼と鬼ごっこするハメに。怖かったここ……!。
ケータイ開くときって絶対光が出てばれるよね?!どうしたらいいんだろうこれ。
助手のこと最初は安否を気にしてたけど、後半は完全に忘却してた模様。
壊された実験データが残ってて喜んでたけど、助手があなた……。
■トリッシュ
キャサリンの助手。とばっちりで非業の死を遂げることになってしまうんだけど、方法がひどすぎる。
巨大イカなど貴重生物のホルマリン漬けプールに頭をつっこまれるっていう。そしてその後プールにいれられ、イカと一緒に漂う……。
怪力男の力で頭を押さえつけられる恐怖。口をあけてしまったらどうなるかよくわかってても、ついには反射で口が開いてしまうまでの描写がおそろしい。ホルマリンは劇薬ですからね…………。
なんかこの子は、謎解きのお手伝いしてくれる子と思ってたので……ショック……
■イノエ・サトウ
お、日本人?!かな。サトウイノエって佐藤井上?そんなまさか!。祈絵さん、とかそういう名前なのかな。
なかなかクセのあるキャラクター。
敵のような味方のようなあやしさもよかった。外見のイメージが手塚マンガに出てくるあやしいキャラクターなかんじ。
■ピーター・ソロモン
苗字がソロモンてだけでただ者ではないわね……。
お金持ちの賢いひとだけど、そんな恵まれているように見えても母を強盗に殺され、息子は刑務所でリンチ殺しされるという不幸が彼を取り巻いている。しかもそれどころではなかったことが下巻で判明。
ピーター…………。
■マラーク
毎回濃い敵だすなあ……
全身入れ墨だらけの外見、映画が楽しみだー。するよね?映画……。
このひとの正体、聞くとああーー!!なるほどーー!て納得なんだけど、考えてもいなかったからまんまとびっくり!。
息子だから家の鍵の隠し場所知ってたのかー、とかいろいろ。
ただ、収監されているときに、父と看守の会話を盗み聞くって状況は可能なのか?。日本じゃ考えられないような。
どんなつくりの刑務所?。
父に見捨てられたと思った青年が、「変身」して家族を襲いにくる……てこれも恐ろしい。
無毛にするため全身除毛材を塗りたくるというおそろしいことをしている。髪の毛はえなくなっちゃうよ?!。
彼のしたかったことがほんと理解できない……
自分にふりかかるたくさんのガラス片、たしかに綺麗に見えるだろうな。その後襲いくる激痛に、彼も人間だったんだな、って思う。
■謎解き
なぞは綺麗に解けるけど、その結末がやはりわかりにくいかな……。
やっぱりそこまでしてみんなが守り争うものなのかよくわからない……。
変身、神格化、がテーマな時点で日本人にはピンとこないかも。
日本人的には、生きてる時は人間、亡くなると仏様、という感じですよね。
もう一回最初からきちんと読むとまた違う感想になるかも。結末が知りたくて急いで読んでしまった。もったいない。
聖書は新約しか読んだことなくて、旧約はダイジェストマンガみたいのしか見てないから、聖書知識もちょっとないとかも。
■作品的にはシリーズではやっぱりいまのとこ『天使と悪魔』が一番すき。
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『こっちへお入り』
平 安寿子先生
■たぶん自分だったら本屋さんで手にとってはいなかったと思う。人が勧めてくれることで出会う本があるのはありがたいしすごく刺激を受けるなあ。
■都内で働く女性・エリが、友人の落語の発表会をつきあいで観ることになり、その出会いが彼女を変えていく・・・というお話です。
素人落語教室に通い、作品に触れていくエリと一緒に、読者も「こっちへお入り」、と落語の世界へ。
エリが落語?知らん!なごく平凡な社会人なので、温度が一緒で親しみやすい。どんどんのめりこんでいくので、途中から置いてかれるけど。
■落語の話だけだったらとっつきにくいところもあったと思うのですが、上述の理由とエリの日常の描写のバランスが良いのでさくさくいけます。
たぶん働く女性はエリと共感するところすごくあると思う。
会社ではそこそこの位置だけど、自分じゃないといけない仕事じゃない、とか。
弟はいいけど弟の嫁が腹立たしい。とか(弟の嫁がつけたキラキラネームの姪と甥のエピソードに笑う)身内のキラキラはなんともしがたいよねv。
キラキラネームは呼ぶほうも恥ずかしいので、エリやエリ両親はあだ名で呼ばざるを得ないっていうのもリアル。
■エリ
落語と出会ったきっかけの発表会に、最後自分も出るところまでお話が進むので、ほんとうに彼女の成長がうれしくて、読んでいて感動。
落語と出会ったことで、いろんなひとがいる、と多面的に物事が見られるようになって、気に入らなかった部下の憎めないところに気づいたり。
家の問題でヤキモキイライラするシーンがリアル。
■旬
中盤までは登場するたびにカチンとくるエリの長い春状態な彼氏。
が、エリの熱に当てられて、(たぶん最初は彼女が知っていて自分が知らないという状態がイヤだった感じだけど)落語にハマってきてからはすごくよかったです。
なんにでも理屈・解説つけてくる屁理屈お化け時代は、なんでこんなのにビールおごるのエリ!と。
彼が好きだという「らくだ」という話が私も気になるので(不条理ギャグ……?)ぜひこれは聴いてみたい。
彼は、落語知識はすぐにみんなを抜いて博士みたいになるけど、実演はへたっぴなままなんじゃないかと想像してます。旬てなんかそんな感じ。
■友美
落語の世界にエリを引き込んだくせに自分は離れて恋愛に夢中になっちゃった親友。
最後戻ってきてくれてよかったv。
友美の恋愛エピソードは共感できるせつなさがあったなあ。臆病にもなるよね。
■有名な寿限無から始まり、いくつもの演目とそれにからめた日常エピソードでお話が進みます。タイトルだけは知っている作品や、まったく知らない作品も。
この本を教えてくれた知人は通勤中落語を聞き始めたのが納得いくくらい、どんなお話なのか、通して知りたくなる。ので私も聞くと思う。
しぐさとかも大事らしいのでCDよりDVDのがいいのかなー。
■そういえば私は一度だけ、春風亭小朝さんの独演会に行ったことがありました。詳しくないけど、たぶんそのとき披露されたのは創作落語だったんじゃないかな。現代の話もまざってたので(アレンジなのかも)。
小朝さんのお話とお話の間に手品やる人がいたりして、新鮮。
BGMや効果音とかもあったので、にぎやかで楽しかった。
古典落語も行ってみたいです。
■明るいだけのお話ではないけれど、ハッピーエンドで読後感が良いし、軽く読めておもしろかった。
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2015年11月10日
2014年09月27日
本感想 『卵をめぐる祖父の戦争』 ディヴィッド・ベニオフ先生
■タイトル通り、卵を1ダース見つけなければいけない祖父の話。
それのどこが大変なのか。それは、舞台がソ連のレニングラードだから。ドイツ軍に包囲され長期の兵糧責めにあい、大量市民餓死者を出したレニングラードだからです。
読んだらつらそうだとは思いつつ、かねて読みたかった本。戦争ものだけどフィクション色が強く(冒険小説の舞台が独ソ戦って感じ)、物語としてドラマチックで痛快で非常に面白い!ので映画化したらいいと思う。とか思って読んでたら、訳者さんのあとがき見たら『トロイ』『ウルヴァリン』とかの脚色とかされてる作者さんなんだそうで!。え、じゃほんとに映像化できそう(もうなってたらすみません)。飢餓を実写でやるのは難しいのでアニメとか。
お話は、現在アメリカに住んでいるシナリオライターの青年(作者本人。と見せかけてここからもうフィクションなんだそう)が、祖父に戦争の話をしてもらう形で進みます。
少年だった祖父の、1942年。その鮮烈な一週間の物語です。
~あらすじ~
包囲下のレニングラード。住民は皆飢えていた。17歳のユダヤの少年レフ(後の祖父)はひょんなことからドイツ兵の死体をみつけ、つい所持品の酒を飲んでしまった罪で連行。死刑を待つ彼は、脱走兵のコーリャと牢で出会う。ふたりは死刑の代わりに卵を1ダースもってこいという命令を受ける。大佐の娘の結婚式にケーキを焼くためだ。
そんなことが可能なのか。とにかく、ふたりは卵を求め探し回ることに。
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以下ネタばれあり
■ロシア人サイドからのお話で、ドイツが侵略者です。ロシアは国土の半分ほどを占領され、大きな都市レニングラードも包囲され数ヶ月(お話はまだ包囲からそこまでたっていない設定なんですね。3年近く包囲は続いた)。配給はどんどん減って、市民は飢えてなんでも食べて、それでも食べるものがない。
卵なんてレニングラードにあるはずがないと思いつつ、闇市に行ったり鶏を飼ってるらしい噂の人を訪ねたり、手段を尽くします。
■レフとコーリャ
旅の相棒で、小説らしく対照的なキャラクター。金髪碧眼でモテ男で大胆不敵なコーリャと、臆病で内省的なレフ。チェスが得意。
ヒーロー気質なコーリャに嫉妬したりあきれたりときめいたり尊敬したりケンカしつつ、祖父は感化されていきます。
レフは思春期なのでとにかく惚れっぽく年中エロ妄想をしているv。こんな時なのに、なのかこんな時だからか、なのか。
飢えてるわりにふたりとも元気でおしゃべり。会話が軽妙で下ネタばかりくっちゃべってます。
■大佐と娘
市民が餓死していく中、堂々とした体躯の大佐と庭でスケートを楽しむ体力のある娘。
娘は戦時下だろうとちゃんとした結婚式を望み、ウェディングケーキがないと話にならんと思っている。市民みんなが皮と骨だけになってる中。
この娘に対して、読者は怒りを感じて読むわけだけど、当のふたりはかわいい娘に夢中。彼女俺のこと見てたぜ、とか。えええ!。そんななの……?。男子がわからない……!。
この娘の言うごちそうで、主人公の住むアパートの住民みんながどれだけ生き延びられるだろう、と考える一方ふとももふとももーーvってハァハァしてるのがすごい。
■都市伝説で
よくこの包囲下のレニングラードでは誘拐・人食いが横行したと言われますが、主人公たちも卵あるぜ、の甘言に人食い夫婦の巣へ招待されてしまったり。
街道で見つけた家族らしき遺体たちからは持ち物が奪い去られ、また臀部の肉が切り取られていた、などの描写が出てくるのが痛い怖い。
飢えに関する描写は物語のメインではないんだけどやはり多く、読んでいて本当に今の生活に感謝しなければなあと思う。
主人公が、何の気なしに飲み込んだ昔の食事の回想するのがせつないんだよね。あのころはパンくずをそのままにして、皿に残ったあぶらのかたまったのなんて見向きもしなかったのに、あれはなんてごちそうだったんだ、と。
■チャップリンの映画に革靴を食べるシーンが出てきますが(映像はみたことあるけどあれはどういう流れのシーンなんだろう?)そんなのは当然として、出てきた食べ物で衝撃だったのは
・図書館キャンディ
本をはがして、表紙をくっつけるのに使うのりを煮詰めて作った(たぶん形状はきりたんぽみたいな感じか?)キャンディ。味はともかくタンパク質ではある。らしい。本は食用に解体された。
高値でコーリャが購入。まずいらしい。
・瓶に詰めた泥
ドイツに爆撃されたあとの食料庫の泥。食料があったからしみこんで味や栄養がある。と期待されるらしい。祖父は食べていないので謎。
・ウォッカ?
ハンカチで漉せば飲めるという謎のウォッカ?。ハンカチには謎の残留物が残る。
メチルアルコールなのかなんなのか。コーリャはひとくち飲んだけど目は大丈夫だった。
■人食い夫婦から逃げ、やっと見つけた鶏は雄鳥だったのでスープにしていただいた後、やっぱりレニングラードに卵はないな……と包囲を抜け外に出ることに。
この、鶏を守っていたおじいさんと孫も切ないんだよね。みんなが狙うからいつも銃を持って鶏を守って、卵で生き延びようとするんだけど、ロシアの寒さに鶏もおじいさんも死んでしまって、瀕死の孫と瀕死の雄鳥だけになってしまって。
とにかく、寒さの描写がすごい。
最初に見つけたドイツ兵も凍死ですからね。
あのナポレオンも破れた寒さ。ロシアの最大の武器。でも国民にも牙を向く。
南の国みたいに、外で寝ても死ななくて、実とかそこらに食べられるものがある、っていうのの逆。やっぱりあたたかいところに住みたい……。
■私はこのレニングラード包囲戦が気になっていたんですが、そのひとつに、包囲ってどんな感じ?っていうのがあり、『進撃の巨人』みたいな丸い街を巨人が取り囲んでいる、みたいなのがイメージしやすいんだけど、実際ぐるっと囲むわけないし(主要な道・橋などを押さえてる感じなのかな)とか、けっこう出入りできたのでは?とか思ってたんですが。
やっぱり、けっこう簡単に街を出てましたねふたり。
まあ命の保証はまったくないので危険きわまりないんだろうけど。
……包囲戦のイメージがわかんない…………。
■街出たら、これ以上ひどい描写はないだろう、寒いけど。と読み進んでいたら、ここで宿敵が現れます。
ひどさもここが群を抜いてきついです。
レニングラードも空襲があり、飢えがあり、決して平和なんかじゃないんだけど、市を出たらもうドイツの支配下。立ち尽くしたまま凍死している兵士や、爆弾を背負わされた犬。
そして、アインザッツグルッペンの影。
悪名高いアインザッツグルッペン(特別行動部隊)は、戦争の前線の後ろからやってきて、ターゲットの殲滅(せんめつ)をはかる軍隊です。
標的はユダヤ人、ロマ族、共産主義者など。
その少佐・アーベントロート。顔のイメージだとハリーポッターシリーズののスリザリンの人みたいな感じか……(ごめん)。(と思ってたら実物がマッチョでちょっと違った)
彼がチェスを好む……という話に、え、主人公の趣味と同じ…まさかまさか……と思ってたら……終盤まさかのチェス勝負!!。すごい話だ。
■パルチザン
祖父はまた初登場のパルチザンのスナイパー女子に恋をします。しかも毎回ほぼ一目惚れっていう。
おま、またか!。
スナイパーは女子が多いのかなあ。
ゲームの『メタルギア・ソリッド』に出てくるスナイパー・ウルフっていうキャラクターが好きだった……彼女はクルド人、って言ってたような。
スナイパーというとこのウルフか、映画『プライベート・ライアン』に出てきたクリスチャンのひとだな……。思い出すと泣ける……。
スナイパーのヴィカがすごく魅力的で!いいヒロイン!。ふつうの大学生だったなんて信じられない…………(自称なのでどこまで本当かわからないけど。大学中退で秘密警察入ってパルチザン?とコーリャは睨んでましたが)
ドイツ軍に捕まった捕虜たちが新聞を読まされるシーンで、「読まないように」と主人公に静かに忠告をするシーンがかっこよかった。
(捕虜たちは、字が読めたら翻訳の仕事、読めないときつい肉体労働、に仕分けられると説明されて、読めるひとは揚々と読み上げて見せる。けれど実際には字の読める知識人層を選別して殺されてしまう)。
■パルチザンは正規軍とは違う形でドイツ軍、特に(ヴィカのいるチームは)アインザッツグルッペンに対抗してます。彼らの狙いはアーベントロート。
まじやっつけてくれアーベントロート!!と思うくらい彼の所業がすさまじい……。
■卵を探してただけなのにパルチザンに加わって軍の襲撃を受けて捕虜になって、そしてアーベントロートとチェス勝負をコーリャがとりつけて……とすごいめまぐるしい一週間。
終盤、ついに登場したアーベントロート本人が………………なにこれ結局戦争さえなければっていう……。結婚指輪とかこんないいチェスができたら正気を保っていられそうだ発言とか。
アインザッツグルッペンも好きで入ったひとなんかほとんどいないっていうし(そりゃそうだ。いや、アーベントロートはわかんないけど)怒りをどこへやればいいのか……。彼のしてきたことは本当に悪魔の行いと思うけど、戦時下でなければそんなことしたはずもないので、このへんもやもやする。
アーベントロートをこういう人物像にしたのは反戦がテーマだからかなあ。
作品はソ連の悪いところもたくさんでてくるから(主人公の父は自分の国に殺されてる)、ドイツ(悪)で主人公のいるソ連(正義)という書き方でもないんだよね。作者アメリカ人だし。
結局、勝負に卵を賭けてのチェスは決着の前に奇襲し戦闘となり、レフは初めて人を殺し、指を失って、コーリャとヴィカを守ることができます。
卵を持ってドイツ軍基地からとんずらし、任務を果たせて、よかったー!となり。
■ゴールの、レニングラードへ入る間際も間際、味方の軍にコーリャが撃たれ、死んでしまうという怒濤の展開。
あそこでもここでも、もっとピンチを切り抜けてきたコーリャが、味方からの威嚇射撃?に当たって死ぬとか、この理不尽。
なんでーなんでー!!。
■コーリャを失い、ひとり失意のまま大佐に卵を届けにいくと、空輸で食料を手に入れた大佐の館にはもう何ダースも卵があって、彼らの命を賭けた卵はそのうちのひとつになった。やりきれない…………。
コーリャは小説家志望で、手帳を持っているんだけど、それについて描写ないのが気になる……。レフの手元には戻らなかったのか…。
■救いは、逃亡のあと別れ、また戦いにひとり向かったパルチザンのヴィカが、終戦後会いに来てくれること。
卵を持ってやってきたヴィカに、オムレツをふたりで作ろうと誘うと、
「あたし、料理はしないの」
でエンド。
冒頭にだけでてくる祖母は料理をいっさいしない人。
そっかー、よかったー、って終わる。
祖父は最初に、親友と出会って、妻となる人に出会って、ドイツ兵をふたり殺した、と語っていて、そして生還しているのでその通りの話なんだけど、
親友は脱走兵で一緒に卵探しなんて変な任務のためかけずりまわって、妻はパルチザンの見事なスナイパーで、ドイツ兵はアインザッツグルッペンの少佐だったんだ、というすごい話なんだよね。
ヴィカは本当に危ない所にいたと思うけど、生きてて本当によかった。
その後保険のセールスやったり大学の講師やったり、ヴィカがタフすぎてかっこいい。かなり姐さん女房かな?。
■この作品の参考図書にもなっている本が……こちらも読みたいんだけど躊躇してた本なんだけど、まあやっぱりこれを参考にするよな、ってレニングラード包囲戦の代表作品なので。近くチャレンジしようと思います。
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それのどこが大変なのか。それは、舞台がソ連のレニングラードだから。ドイツ軍に包囲され長期の兵糧責めにあい、大量市民餓死者を出したレニングラードだからです。
読んだらつらそうだとは思いつつ、かねて読みたかった本。戦争ものだけどフィクション色が強く(冒険小説の舞台が独ソ戦って感じ)、物語としてドラマチックで痛快で非常に面白い!ので映画化したらいいと思う。とか思って読んでたら、訳者さんのあとがき見たら『トロイ』『ウルヴァリン』とかの脚色とかされてる作者さんなんだそうで!。え、じゃほんとに映像化できそう(もうなってたらすみません)。飢餓を実写でやるのは難しいのでアニメとか。
お話は、現在アメリカに住んでいるシナリオライターの青年(作者本人。と見せかけてここからもうフィクションなんだそう)が、祖父に戦争の話をしてもらう形で進みます。
少年だった祖父の、1942年。その鮮烈な一週間の物語です。
~あらすじ~
包囲下のレニングラード。住民は皆飢えていた。17歳のユダヤの少年レフ(後の祖父)はひょんなことからドイツ兵の死体をみつけ、つい所持品の酒を飲んでしまった罪で連行。死刑を待つ彼は、脱走兵のコーリャと牢で出会う。ふたりは死刑の代わりに卵を1ダースもってこいという命令を受ける。大佐の娘の結婚式にケーキを焼くためだ。
そんなことが可能なのか。とにかく、ふたりは卵を求め探し回ることに。
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以下ネタばれあり
■ロシア人サイドからのお話で、ドイツが侵略者です。ロシアは国土の半分ほどを占領され、大きな都市レニングラードも包囲され数ヶ月(お話はまだ包囲からそこまでたっていない設定なんですね。3年近く包囲は続いた)。配給はどんどん減って、市民は飢えてなんでも食べて、それでも食べるものがない。
卵なんてレニングラードにあるはずがないと思いつつ、闇市に行ったり鶏を飼ってるらしい噂の人を訪ねたり、手段を尽くします。
■レフとコーリャ
旅の相棒で、小説らしく対照的なキャラクター。金髪碧眼でモテ男で大胆不敵なコーリャと、臆病で内省的なレフ。チェスが得意。
ヒーロー気質なコーリャに嫉妬したりあきれたりときめいたり尊敬したりケンカしつつ、祖父は感化されていきます。
レフは思春期なのでとにかく惚れっぽく年中エロ妄想をしているv。こんな時なのに、なのかこんな時だからか、なのか。
飢えてるわりにふたりとも元気でおしゃべり。会話が軽妙で下ネタばかりくっちゃべってます。
■大佐と娘
市民が餓死していく中、堂々とした体躯の大佐と庭でスケートを楽しむ体力のある娘。
娘は戦時下だろうとちゃんとした結婚式を望み、ウェディングケーキがないと話にならんと思っている。市民みんなが皮と骨だけになってる中。
この娘に対して、読者は怒りを感じて読むわけだけど、当のふたりはかわいい娘に夢中。彼女俺のこと見てたぜ、とか。えええ!。そんななの……?。男子がわからない……!。
この娘の言うごちそうで、主人公の住むアパートの住民みんながどれだけ生き延びられるだろう、と考える一方ふとももふとももーーvってハァハァしてるのがすごい。
■都市伝説で
よくこの包囲下のレニングラードでは誘拐・人食いが横行したと言われますが、主人公たちも卵あるぜ、の甘言に人食い夫婦の巣へ招待されてしまったり。
街道で見つけた家族らしき遺体たちからは持ち物が奪い去られ、また臀部の肉が切り取られていた、などの描写が出てくるのが痛い怖い。
飢えに関する描写は物語のメインではないんだけどやはり多く、読んでいて本当に今の生活に感謝しなければなあと思う。
主人公が、何の気なしに飲み込んだ昔の食事の回想するのがせつないんだよね。あのころはパンくずをそのままにして、皿に残ったあぶらのかたまったのなんて見向きもしなかったのに、あれはなんてごちそうだったんだ、と。
■チャップリンの映画に革靴を食べるシーンが出てきますが(映像はみたことあるけどあれはどういう流れのシーンなんだろう?)そんなのは当然として、出てきた食べ物で衝撃だったのは
・図書館キャンディ
本をはがして、表紙をくっつけるのに使うのりを煮詰めて作った(たぶん形状はきりたんぽみたいな感じか?)キャンディ。味はともかくタンパク質ではある。らしい。本は食用に解体された。
高値でコーリャが購入。まずいらしい。
・瓶に詰めた泥
ドイツに爆撃されたあとの食料庫の泥。食料があったからしみこんで味や栄養がある。と期待されるらしい。祖父は食べていないので謎。
・ウォッカ?
ハンカチで漉せば飲めるという謎のウォッカ?。ハンカチには謎の残留物が残る。
メチルアルコールなのかなんなのか。コーリャはひとくち飲んだけど目は大丈夫だった。
■人食い夫婦から逃げ、やっと見つけた鶏は雄鳥だったのでスープにしていただいた後、やっぱりレニングラードに卵はないな……と包囲を抜け外に出ることに。
この、鶏を守っていたおじいさんと孫も切ないんだよね。みんなが狙うからいつも銃を持って鶏を守って、卵で生き延びようとするんだけど、ロシアの寒さに鶏もおじいさんも死んでしまって、瀕死の孫と瀕死の雄鳥だけになってしまって。
とにかく、寒さの描写がすごい。
最初に見つけたドイツ兵も凍死ですからね。
あのナポレオンも破れた寒さ。ロシアの最大の武器。でも国民にも牙を向く。
南の国みたいに、外で寝ても死ななくて、実とかそこらに食べられるものがある、っていうのの逆。やっぱりあたたかいところに住みたい……。
■私はこのレニングラード包囲戦が気になっていたんですが、そのひとつに、包囲ってどんな感じ?っていうのがあり、『進撃の巨人』みたいな丸い街を巨人が取り囲んでいる、みたいなのがイメージしやすいんだけど、実際ぐるっと囲むわけないし(主要な道・橋などを押さえてる感じなのかな)とか、けっこう出入りできたのでは?とか思ってたんですが。
やっぱり、けっこう簡単に街を出てましたねふたり。
まあ命の保証はまったくないので危険きわまりないんだろうけど。
……包囲戦のイメージがわかんない…………。
■街出たら、これ以上ひどい描写はないだろう、寒いけど。と読み進んでいたら、ここで宿敵が現れます。
ひどさもここが群を抜いてきついです。
レニングラードも空襲があり、飢えがあり、決して平和なんかじゃないんだけど、市を出たらもうドイツの支配下。立ち尽くしたまま凍死している兵士や、爆弾を背負わされた犬。
そして、アインザッツグルッペンの影。
悪名高いアインザッツグルッペン(特別行動部隊)は、戦争の前線の後ろからやってきて、ターゲットの殲滅(せんめつ)をはかる軍隊です。
標的はユダヤ人、ロマ族、共産主義者など。
その少佐・アーベントロート。顔のイメージだとハリーポッターシリーズののスリザリンの人みたいな感じか……(ごめん)。(と思ってたら実物がマッチョでちょっと違った)
彼がチェスを好む……という話に、え、主人公の趣味と同じ…まさかまさか……と思ってたら……終盤まさかのチェス勝負!!。すごい話だ。
■パルチザン
祖父はまた初登場のパルチザンのスナイパー女子に恋をします。しかも毎回ほぼ一目惚れっていう。
おま、またか!。
スナイパーは女子が多いのかなあ。
ゲームの『メタルギア・ソリッド』に出てくるスナイパー・ウルフっていうキャラクターが好きだった……彼女はクルド人、って言ってたような。
スナイパーというとこのウルフか、映画『プライベート・ライアン』に出てきたクリスチャンのひとだな……。思い出すと泣ける……。
スナイパーのヴィカがすごく魅力的で!いいヒロイン!。ふつうの大学生だったなんて信じられない…………(自称なのでどこまで本当かわからないけど。大学中退で秘密警察入ってパルチザン?とコーリャは睨んでましたが)
ドイツ軍に捕まった捕虜たちが新聞を読まされるシーンで、「読まないように」と主人公に静かに忠告をするシーンがかっこよかった。
(捕虜たちは、字が読めたら翻訳の仕事、読めないときつい肉体労働、に仕分けられると説明されて、読めるひとは揚々と読み上げて見せる。けれど実際には字の読める知識人層を選別して殺されてしまう)。
■パルチザンは正規軍とは違う形でドイツ軍、特に(ヴィカのいるチームは)アインザッツグルッペンに対抗してます。彼らの狙いはアーベントロート。
まじやっつけてくれアーベントロート!!と思うくらい彼の所業がすさまじい……。
■卵を探してただけなのにパルチザンに加わって軍の襲撃を受けて捕虜になって、そしてアーベントロートとチェス勝負をコーリャがとりつけて……とすごいめまぐるしい一週間。
終盤、ついに登場したアーベントロート本人が………………なにこれ結局戦争さえなければっていう……。結婚指輪とかこんないいチェスができたら正気を保っていられそうだ発言とか。
アインザッツグルッペンも好きで入ったひとなんかほとんどいないっていうし(そりゃそうだ。いや、アーベントロートはわかんないけど)怒りをどこへやればいいのか……。彼のしてきたことは本当に悪魔の行いと思うけど、戦時下でなければそんなことしたはずもないので、このへんもやもやする。
アーベントロートをこういう人物像にしたのは反戦がテーマだからかなあ。
作品はソ連の悪いところもたくさんでてくるから(主人公の父は自分の国に殺されてる)、ドイツ(悪)で主人公のいるソ連(正義)という書き方でもないんだよね。作者アメリカ人だし。
結局、勝負に卵を賭けてのチェスは決着の前に奇襲し戦闘となり、レフは初めて人を殺し、指を失って、コーリャとヴィカを守ることができます。
卵を持ってドイツ軍基地からとんずらし、任務を果たせて、よかったー!となり。
■ゴールの、レニングラードへ入る間際も間際、味方の軍にコーリャが撃たれ、死んでしまうという怒濤の展開。
あそこでもここでも、もっとピンチを切り抜けてきたコーリャが、味方からの威嚇射撃?に当たって死ぬとか、この理不尽。
なんでーなんでー!!。
■コーリャを失い、ひとり失意のまま大佐に卵を届けにいくと、空輸で食料を手に入れた大佐の館にはもう何ダースも卵があって、彼らの命を賭けた卵はそのうちのひとつになった。やりきれない…………。
コーリャは小説家志望で、手帳を持っているんだけど、それについて描写ないのが気になる……。レフの手元には戻らなかったのか…。
■救いは、逃亡のあと別れ、また戦いにひとり向かったパルチザンのヴィカが、終戦後会いに来てくれること。
卵を持ってやってきたヴィカに、オムレツをふたりで作ろうと誘うと、
「あたし、料理はしないの」
でエンド。
冒頭にだけでてくる祖母は料理をいっさいしない人。
そっかー、よかったー、って終わる。
祖父は最初に、親友と出会って、妻となる人に出会って、ドイツ兵をふたり殺した、と語っていて、そして生還しているのでその通りの話なんだけど、
親友は脱走兵で一緒に卵探しなんて変な任務のためかけずりまわって、妻はパルチザンの見事なスナイパーで、ドイツ兵はアインザッツグルッペンの少佐だったんだ、というすごい話なんだよね。
ヴィカは本当に危ない所にいたと思うけど、生きてて本当によかった。
その後保険のセールスやったり大学の講師やったり、ヴィカがタフすぎてかっこいい。かなり姐さん女房かな?。
■この作品の参考図書にもなっている本が……こちらも読みたいんだけど躊躇してた本なんだけど、まあやっぱりこれを参考にするよな、ってレニングラード包囲戦の代表作品なので。近くチャレンジしようと思います。
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2014年09月03日
小説感想 小野不由美先生 『魔性の子』 『残穢』 『ゴーストハント2』
『魔性の子』
■あれ……十二国記って中華ファンタジー的なあれじゃなかったでしたっけ……なにこれ陰惨……怖い……てなった。シリーズ読んでるお友達によるとこれはちょっと番外的な扱いらしい。ここから読むべきではなかったか。ホラーです!。
映像化しても面白そう!。
女の腕が少年の足にからみついてる様子とか、夜現れる目を見開いた女の姿とか、表現がぞわぞわくる。
手を釘で打ち抜かれた子いい子だったな。(このシーンも怖かった……!)
面白くて一気に読んでしまったので、シリーズの続きみてからまた読み返したいなあ。
ちょいチラしてる世界が十二国記世界ということなんだよね。
この話の主人公たちは本編にも出てくるのかな。
教育実習生が生徒を自宅に泊めるっていろいろすごい。
『ゴーストハント2』
■こちらも間違えて『2』から読んでしまった。(こんなんばっか)けど設定わかりやすいし面白かった!。若干『1』のネタばれ入ってしまったけど。
ずいぶん文体違うなあと思ったら元は少女小説なんだね。主人公が勝ち気な女の子で、美形でナルシストの心霊探偵ナルの助手となり、変事件に挑む的な。
ポルターガイストに悩む洋館がテーマでした。さっきまで使って手元にあるはずの物がふと移動してなくなっている、って描写が不気味で好き。
霊視できる和風美少女とかケバめ生意気巫女とかチャラ坊さんとか関西弁エクソシストとか登場人物がおもしろい。
アンティークドールの怖さ……。
横にすると目をつぶるタイプは見開きタイプよりはいいけどこっちもこっちで怖い。もし開いてたらより怖いだろうがーーってなる。
『残穢』
■作者さんの実体験ぽい作りに見せた小説(だよね?フィクションだよね?ね?)。
読者から、「住んでいる部屋で物音がするんです」、という手紙をもらい、部屋が悪いのか?なにか過去にあったか?と調べ始めると……というお話。
連鎖、がテーマなのかな。
ケガレの連鎖、恐怖の連鎖、伝わっていくもの、消えてなくならないもの、共鳴して影響を起こすもの……。じわり和風ホラー。
背後から聞こえる音はなんの音なのかを探るうち広がる想像が怖い。畳をするような音、同じ場所をすっている、無気力に箒を往復させる女?、いや箒でなく着物の帯?、すって動くのは首吊りに使っているから?と音から膨らんでいくものがすごかった。だから人間って恐がりなのかな。
前半が恐怖をあおってく作りで、後半はなぜそうなのか、って解明をがんばるので、ホラー小説的には全体的にはそんな怖くないです。怖がりたいぜうおーー!ってテンションで読むとちょと違うテイストかも。
じわじわ怖いというか、現代ならではの不気味さが残っていい読後感なんだけど。賃貸の前の住人はどんな人だったのか、とか、この建物のある土地はどんな土地だったのか、とか、わからないまま暮らしていて、もちろんなにもなければそんなこと気にもしないんだけれど、怪異に当たったとき、それが大きな意味を持ってしまう。
『呪怨』って、すごくよく出来てて大好きなんだけど、あれもストンと納得できるストーリーなんだよね。ひどい殺人事件があった家があって、その家に関わると無差別に呪いがかかる。理不尽なのに納得いってしまう。
ケガレに触れたから、って同情と、じゃあしかたないね、みたいな納得。『パラノーマル・アクティビティ』もそうかな。
なにも悪いことしてないのに、家に関わっただけでとりつかれるってほんとは納得いかないことなのに納得しちゃうんだから不思議……。
このお話も大元の『呪怨』の家、みたいな本家があって、「物音のする部屋」の手紙を送ってきた読者の怪異はとこから伝播してきたものではないか、という。
物語としてきっちり解決はしないので(そこもルポ風)、そうなんだろうな、って読んでて解釈する感じ?。怪異から離れるのが一番の解決法とするなら、君子危うきに……ってほんとに格言だな。
私の大好きな平山夢明先生も登場。作中でも先生かっこいい!!。クーーーーール!!。アドバイスしてくれたり資料を送ってくれたり廃屋探検に同行してくれます。
旦那さんの綾辻先生も出るかと思いきや出ない。話題にあがるだけ。ちぇー。しかしいい距離間のご夫婦で素敵だ。
■あれ……十二国記って中華ファンタジー的なあれじゃなかったでしたっけ……なにこれ陰惨……怖い……てなった。シリーズ読んでるお友達によるとこれはちょっと番外的な扱いらしい。ここから読むべきではなかったか。ホラーです!。
映像化しても面白そう!。
女の腕が少年の足にからみついてる様子とか、夜現れる目を見開いた女の姿とか、表現がぞわぞわくる。
手を釘で打ち抜かれた子いい子だったな。(このシーンも怖かった……!)
面白くて一気に読んでしまったので、シリーズの続きみてからまた読み返したいなあ。
ちょいチラしてる世界が十二国記世界ということなんだよね。
この話の主人公たちは本編にも出てくるのかな。
教育実習生が生徒を自宅に泊めるっていろいろすごい。
『ゴーストハント2』
■こちらも間違えて『2』から読んでしまった。(こんなんばっか)けど設定わかりやすいし面白かった!。若干『1』のネタばれ入ってしまったけど。
ずいぶん文体違うなあと思ったら元は少女小説なんだね。主人公が勝ち気な女の子で、美形でナルシストの心霊探偵ナルの助手となり、変事件に挑む的な。
ポルターガイストに悩む洋館がテーマでした。さっきまで使って手元にあるはずの物がふと移動してなくなっている、って描写が不気味で好き。
霊視できる和風美少女とかケバめ生意気巫女とかチャラ坊さんとか関西弁エクソシストとか登場人物がおもしろい。
アンティークドールの怖さ……。
横にすると目をつぶるタイプは見開きタイプよりはいいけどこっちもこっちで怖い。もし開いてたらより怖いだろうがーーってなる。
『残穢』
■作者さんの実体験ぽい作りに見せた小説(だよね?フィクションだよね?ね?)。
読者から、「住んでいる部屋で物音がするんです」、という手紙をもらい、部屋が悪いのか?なにか過去にあったか?と調べ始めると……というお話。
連鎖、がテーマなのかな。
ケガレの連鎖、恐怖の連鎖、伝わっていくもの、消えてなくならないもの、共鳴して影響を起こすもの……。じわり和風ホラー。
背後から聞こえる音はなんの音なのかを探るうち広がる想像が怖い。畳をするような音、同じ場所をすっている、無気力に箒を往復させる女?、いや箒でなく着物の帯?、すって動くのは首吊りに使っているから?と音から膨らんでいくものがすごかった。だから人間って恐がりなのかな。
前半が恐怖をあおってく作りで、後半はなぜそうなのか、って解明をがんばるので、ホラー小説的には全体的にはそんな怖くないです。怖がりたいぜうおーー!ってテンションで読むとちょと違うテイストかも。
じわじわ怖いというか、現代ならではの不気味さが残っていい読後感なんだけど。賃貸の前の住人はどんな人だったのか、とか、この建物のある土地はどんな土地だったのか、とか、わからないまま暮らしていて、もちろんなにもなければそんなこと気にもしないんだけれど、怪異に当たったとき、それが大きな意味を持ってしまう。
『呪怨』って、すごくよく出来てて大好きなんだけど、あれもストンと納得できるストーリーなんだよね。ひどい殺人事件があった家があって、その家に関わると無差別に呪いがかかる。理不尽なのに納得いってしまう。
ケガレに触れたから、って同情と、じゃあしかたないね、みたいな納得。『パラノーマル・アクティビティ』もそうかな。
なにも悪いことしてないのに、家に関わっただけでとりつかれるってほんとは納得いかないことなのに納得しちゃうんだから不思議……。
このお話も大元の『呪怨』の家、みたいな本家があって、「物音のする部屋」の手紙を送ってきた読者の怪異はとこから伝播してきたものではないか、という。
物語としてきっちり解決はしないので(そこもルポ風)、そうなんだろうな、って読んでて解釈する感じ?。怪異から離れるのが一番の解決法とするなら、君子危うきに……ってほんとに格言だな。
私の大好きな平山夢明先生も登場。作中でも先生かっこいい!!。クーーーーール!!。アドバイスしてくれたり資料を送ってくれたり廃屋探検に同行してくれます。
旦那さんの綾辻先生も出るかと思いきや出ない。話題にあがるだけ。ちぇー。しかしいい距離間のご夫婦で素敵だ。