2018年03月13日

映画『沈黙 -サイレンス-』感想

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■原作小説すごく良かったと記憶しているんだけど、読んだのはだいぶ昔。
あの有名すぎるラストの場面は記憶に残っていたけれど、細部は忘れ切っています。

 遠藤周作さんは私なにより『海と毒薬』が好き!!これも映画化されないかなあ。
そういえば『沈黙』は一度映画化されてるんですよね。スコセッシ監督がついに!!みたいな扱いだから、初の映画化なのかと思ってた……。

 それにしても『沈黙』のハリウッド映画化、宝塚歌劇団で天草四郎が今年上演予定。『MESSIAH(メサイア)異聞・天草四郎』ね。
これで長崎の隠れキリシタン遺産の世界遺産登録きたらすごいな!と思います。勢いきてるよね!と勝手に感じています( `ー´)ノ


■あらすじ
 ポルトガル人でイエズス会の司祭である主人公ロドリゴ。
彼の師フェレイラは布教のため遠い日本へ渡っていた。日本ではキリスト教信者たちは厳しい状況下にあるらしい。
その師が棄教(キリスト教信者でなくなること)し、今は日本人として暮らしていると情報を得たロドリゴ。

布教者として、そして師が気になったロドリゴは、もう一人の仲間ガルベとともに日本へ降り立つが、そこは弾圧吹き荒れる『地獄』だった。


 以下、ネタばれありです。




 時代は江戸時代初期。

 冒頭、ロドリゴが探すフェレイラ神父本人が出てきます。
キリシタンが熱湯(温泉の源泉かな?あれ雲仙?)をかけられ続ける拷問を受けているのを見ています。
しょっぱなから辛い。

 日本を舞台にした外国映画らしく、出てくる日本人、英語ベラベラでございます。
これ、萎えるって人多いと思う。
ちょ、貧農民すらしゃべるのwwwてちょっとなります。

キリスト信者だから単語とかは知ってると思うけど、文法きっちりしゃべるのは違う気が。
仮定法、現在完了とかも駆使してしゃべってましたよね。

もっとカタコトでいいと思うさすがに。懺悔まで英語で行うレベルは無理があるわ。

イメージ的には、『ダンス・ウィズ・ウルブス』並に言葉通じないのでは。
本当は英語じゃなくてポルトガル語なんだと思うけど、ハリウッドだから基本英語でしゃべっています。


■セバスチャン・ロドリゴ神父( アンドリュー・ガーフィールド)
 アメイジング・スパイダーマンの人なんだけど、もはや別人。

 主人公。
 彼の目線が終盤まで続きます。
彼の目からみた日本、日本人、日本人のキリスト教(本来のキリスト教とは違う、と言われてましたね)。

 途中で日本側からの指摘があるように、彼は無知蒙昧な者たちに
「教え、授け、導く」 
ためにきているので、日本に迎合はしないんです。
だから言葉も覚えようとしない。

 日本人たちが怯え隠れていて、危ないから小屋からでないでといわれたのに日光浴しちゃう序盤の軽く考えていた司祭ふたりが、現実を知り追いつめられていく様がすごい。

 途中ガルペと離ればなれになるけれど、どっちもやばい分岐点だった。救いのない分岐点。


■キチジロー (窪塚洋介)
 この映画のためにやせたのかな?てくらいガリガリでしたね。
リアル食べられてない感……

 キチジロー、腹立つけれど人間らしい。
家族が踏み絵を拒んでも、自分だけ踏んで逃げてしまったり、銀300のために司祭を売ったり(とてもわかりやすくユダイメージでした)、簡単に裏切る彼を信徒というのは難しいのでは?でも信者なんですよね。

 殉教はできないけれど、彼は信者なんです。
平和な時代ならちゃんとした信者でいられた。なんでこの時代の子だったのか……本当にそうだなあと。

 キチジローの、悪いことしちゃったので懺悔させてくださいバードレ(司祭)!で、懺悔したら神に許されてすべてチャラになるのかなあ、と最初イライラしてしまう。
裏切ったロドリゴに対してあなたを裏切ったことを謝りたいから懺悔させて、ってなんか変……
ほかに懺悔を聞いてくれる司祭はもういないけれども。
ロドリゴにじゃなく、神様に懺悔してるのだからいいのかな?

 ラストで彼は隠し持っていた信者の証をみつけられて連行されてしまう。そしてたぶん処刑されたと思われます。


■踏み絵
 社会の教科書にもでてきた踏み絵。
映画中も何度もでてきます。

精巧な作りではない、平べったいタブレットくらいの大きさ。
でもこれを踏めずに殺された人の多さにやりきれないです。
神様は踏んだからといって怒らないよ……て思うけど。思ってしまうけども。

なんとか踏んだ人々に、じゃあ次はロザリオに唾吐け、て追い打ちされて、それはできない信徒たちも悲しい。

ロドリゴを守ろうとしたモキチたちははりつけにされ、海に放置という刑を受ける。
満潮になると顔まで水がきて、じょじょに弱らされていく処刑法。
体力のない長老はすぐに亡くなってしまうが、若いモキチは数日生き延びて、はりつけにされながら聖歌を歌っているシーンが一番印象に残りました。

あと、踏み絵を踏ませるシーンで、
「ちゃんと踏まなくていい」
「はじっこにかするくらいでいい」
「心ではなにを思っていてもかまわない」
「形だけだ」
「わしもこんなことしたくない。どうでもいい」
みたいに言うのも印象的。

 弾圧も別に積極的にやりたくないけど、仕事だからもうさっさと踏んでくれれば助かるのに。放免なのに。
これがすごくフラットなひとの気持ちだったのかな。


■司祭のみた幻のイエス・キリストの顔
『ハンター×ハンター』のイルミ兄……
急に出てらっしゃるとびっくりします。

暗闇、霧のなか川を渡るシーンと、川面にうつったロドリゴの顔が急にキリストの顔になるシーンはちょっとしたホラー。

あの、ただ見つめてくる感情の読めない瞳と、こんなにひどい状況なのに、呼びかけに答えてくれない彼の「沈黙」に主人公は追いつめられていきます。

 でも最後に主人公に聞こえた「彼」の「声」はとても穏やかで優しい真摯なものでした。

 助けるのではなく、常に一緒にいてともに苦しんでいる。
ともにこの状況にいる。

踏みなさい。
私を踏みなさい。

 すごいいいシーンだけど、踏みなさい、が「ステップ」なのが、そうかステップとしか言いようがないのか……でもちょっと楽しい響きだな……と思ってしまった。

意外としっかりど真ん中を踏むロドリゴ。
こういうの、一回で済むと思ったら、生涯において何度もやらされ監視されているとは知らなかった。


■原作で衝撃だった「いびき」シーン

 ここ、映画ではさらっと流されたような……

 耐えてきた彼がついについに棄教するすごく大事なシーンだと思うんだけど……
原作だとここものすごかった気がするんだよね。文字と映像の違いかなあ。
初めて読んだ時の衝撃が一番大きかったというだけかも。

 ロドリゴは自身にひどい拷問を受けていないので、被害者ではあるんだけど目撃者のイメージのほうが強いと思いました。
役人たちはロドリゴを殉死させ英雄にしたいわけではなく、改宗させたいんですよね。
なのでわざとロドリゴ以外にひどい仕打ちをして追い詰めていたので、それで合ってるんだろうけど。

 まったく記憶違いかもしれない。
というわけでちゃんと原作読もうと思いました。


■井上筑後守  (イッセー尾形)
 ロドリゴ目線だと悪の親玉。
けれど、日本側にもキリスト教を禁止したい、鎖国したい理由はあるんですよね。
植民地の問題とか。基本支配したろ!て国から来てるわけですから。

仏教や儒教は日本になじむのに、どうしてキリスト教はこんなに反発があったんでしょう。やっぱり、絶対神という存在は支配する側には受け入れてはいけないものに感じるのかな。

神の下に平等って言われたら、士農工商とか、年貢納める意味とは?てなるものね。
てことはイスラム教も親和しないのか。

 彼は独自の表現で日本に外の文化も人もいらない、とロドリゴに伝えます。
外国を石女にたとえて、石女と結婚する男はいないと。
石女、なんて表現ひさしぶりに聞いたわ。

 柔和で冷静でやる気なさげなのにどこか不気味で怖い。
声がすごくガラガラしてて、独特の存在感がよかったです。
出てくるたびイノウエサマー!てなる。
最初、ロドリゴは目の前の老人が恐れられる「悪の権化」井上とは気づかないんです。このシーン、イノウエサマのギャップがわかりやすくて好き。

■通訳 (浅野忠信)
 清潔でひょうひょうとして、どんどん汚くなってくロドリゴと対照的。
通訳としてそばにいたけれど、何人もの司祭を転ばせてきた男らしい。

 あのアルカイックスマイルな感じ、外国のかたはどう受け止めるんだろう。


■ジュアン (加瀬亮)
気配消しすぎ! 全然気づかなかった!逆にすごいわ。
小松菜奈ちゃんは小汚いかっこうしててもとてもかわいらしかった……。
彼ら彼女らに「パードレ」は輝いて見えていたんだろうね。

作品にはさまざまな処刑が出てきますが、加瀬亮さんの一撃で首を落とされるのが一番苦しみが少ないと思います。さすが日本刀。


■その後のフェレイラとロドリゴ
 別の人物(あなた誰よ)が彼らの人生を語ります。

 日本名を与えられ日本人の妻を(強制的に)もらい、キリスト教を批判する本を書かされたり、日本の隠れキリシタンを見つけたり。
貿易で日本に持ち込まれる荷物の検査とかやってたんだね。
カンニングをみつける先生なみでした。

隠さなければいけないものなので、ほんといろんな方法でキリスト教のモチーフをひそませてたんですね。

個人的には、作中ロドリゴも言ってるけれどそんなに物がなくてはいけないのかと思いますけど。
信仰って心だけでは完結しないのかしら。
マリア像とか死せるキリストの絵とかもってないといけないのかなあ。
ものすごく危険なら物はいっさい持たず心に信仰を持ち続けたらいいのに。
でもそれこそ捨てられるものでもないだろうし、大事だし隠さなきゃ!てなるのかな。

 フェレイラが死に、ロドリゴも老いて亡くなります。
彼の妻の表情やしぐさが気になります……あれどんな感情なの。あまりうまくいってなかったというか、無理矢理めあわされてるし、偏見とか妻もいろいろあるんだろうけれど。
最後ロザリオを棺に入れてくれたのは妻だと思うんですが……

 日本式の、丸い木の棺に窮屈そうにおさまったロドリゴの組んだ手の中にあるのがモキチのロザリオ。
彼は決して生涯表には出さずとも、心は信徒のままであったというラストでした。
日本式に火葬にされ、墓に眠る棄教した宣教師の人生。

今、心でなにを信じて思っていてもいいという時代に心から感謝する映画です。


■この作品、おもしろいのが音楽がほとんどないんです。
効果音とか台詞はあるんだけど、基本自然の音でできている。

波の音や足音、蝉の声や虫の嫌な羽音が印象的。

深刻な空気の作品にぴったりでしたね。

時間は2時間半以上と非常に長いですが、集中を切らさずにみられる作品だと思います。


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posted by イナ at 10:00| Comment(0) | 映画感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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