ハードボイルドのような。
表紙も豆電球が吹っ飛んで首みたいに見えるようなイラストで(ハードカバーのほう)、なんかクセのありそな一冊。
湊かなえさんのことイヤミスと言うけど、平山夢明先生はなんでしょうね。イヤサイコホラー??。
読んでて楽しくはない。でも気になって読み進めちゃう感じ。そして読み終わってもさわやかな読後感はない。虚無感笑。
こちらはある者や物の死にまつわる短編集。ろくでなしだったり嫌われ者だったり英雄だったり。
以下ネタばれ。
■或るはぐれ者の死
子供の遺体が道路にこびりついていることに気が付いたホームレスの物語。
車にはねられ、そのまま踏まれ続けてパッと見もはや人間だったとわからないものになっている遺体。
誰も気づかず、そのままにただ長い期間捨ておかれているという不気味さ。
こういう設定どうして思いつくんだろう。
こんなところにいちゃいけない、と道路と一体化しつつある子供をはがして抱え、埋めてあげようとした彼の行く末に絶句。
娯楽としてホームレスを狩る子供たちに惨殺されてしまいます。
たぶん一番読後感が悪い作品。を冒頭に持ってこられるっていう。
■或る嫌われ者の死
世界観がわからないまま読み進めていくしかなく、中盤がすぎてやっと、死の危機にある男性が世界から嫌われる「日本人」なのだとわかる。
近未来パラレルみたいな。日本はなんだかんだあって環境汚染とかしてすごいつまはじきらしい。せつない。
星新一先生のショートショートにすごい毒とグロをまぜた感じで好き(星先生もけっこう毒あるけど)
■或るろくでなしの死
子供を放置死させちゃう父親の話。
父親がろくでなしなのはわかりやすくて、自分の目の届かないところで問題がいい感じに解決してたらいいなー、みたいなところがすごく腹立つけど、まだ理解できる感じ。
母親のほうが読んでて不気味だったかな…
こういう、響かないひとって怖い。
変に丁寧にしゃべったりとか。
会話がかみ合わないのが怖いよー。
出番は少ないけど存在感のあった、子供。
生まれてくる場所を選べないってやりきれない。
■或る愛情の死
交通事故に巻き込まれ、いまにも車が爆発しそう。
ふたりの息子を必死に助けようとする父親が、ほんとにもうダメだ…と思ったとき、助ける相手を変えてしまう、というこちらもあらすじだけできつい圧のあるストーリー。
長男は身体に障害があり、また病気も発覚。余命も少ないとと宣告されていて、次男は健康。
父親は最後の最後に、長男の手を離して次男を助けようとする。その選択と結果として、長男は家族の見ている前で無残に焼き死んでしまい、妻は夫を憎み出し、次男は焼け焦げた長男の出てくる悪夢におびえ、家族は壊れてしまう。
なんかよく動物も、どちらかしか助けられないなら大きくなった子のほうを助ける(そのほうが子孫を残せる可能性が高いから)って聞いたことある気がするんだけど、このお父さんもあまりに普通のひとで、なんか読んでていたたまれない…
ひどい火傷を負って必死に息子を助けたのに、命を選択したことを妻は許さない。
妻がどんどんおかしくなってく口調がホラー。
どうするんだこの話…と思ったら意外な着地。
余命宣告した主治医本人がが脳腫瘍を患っていた。そして複数の患者にでたらめな余命申告したりしてた…て長男、余命わずかじゃなかったんだと判明。
それを理由に命の選択をしたのに…のに…
次男がほんとにかわいそうでした。
■或る英雄の死
近所にやばいとされる家、って昔あった気がする。
近づいちゃやばいよ、とか一家でおかしいよ、とか。ほんとはどうだったのか知らないけど(家の外観とかから生まれた噂なのかも)
やばい家に近づいてしまった男ふたりの物語。
このふたりの関係性。
少年時代、川でおぼれた主人公を助けてくれた英雄。
足が速かったのに助けた時の怪我で人生が変わってしまった英雄に、消せない恩がある主人公。
おかしな家の者に目玉をつぶされた英雄。
今も彼がやってきて主人公に連れてってもらいその家に呪詛を吐くが、とっくに家などなく更地。というラスト。憂鬱な関係だなこれ。
■或るからっぽの死
ラストがほんのりさびしい。
自分に関心を向けるひとの顔しか見えない男が主人公。
両親すらも彼に関心をなくしていく様が恐ろしい。
交差点などひとの多いところでは、すれ違う相手が一瞬ぶつからないよう自分に関心を寄せるので、パッパッ、と人の顔が点滅しているように見える。
というエピソードが好き。
最後はついに鏡でみた自分の顔が見えなくなる=自分がどうでもよくなる主人公。
ここでも暴力によって目をつぶされるシーンが出でくるけど、短編集の中にそんな場面が2回も出てくるってすごいわ。
この作家さんのフィクション系の作品では殺し屋たちの集まるダイナーで働く羽目になっちゃった女が主人公の『ダイナー』がとにかくほんとにほんとに大好きです。
すごくお勧めです!!
ことあるごとに『ダイナー』を推していきたい心意気。
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ラベル:平山夢明